EF Education Firstが例年実施している非英語圏の英語力調査で、日本は88か国中49位と、過去8年の調査で最も低い結果となった。
EF Education Firstはスウェーデン発でスイスに本部がある世界的な国際教育機関で、語学学校や留学プログラム、オンライン学習などを提供している。
なかでもEF SET®という英語能力判定試験は、無料で受けられる世界唯一のオープンアクセス標準英語テストとして世界中から注目されはじめている。そして、そのテストの結果を国ごとに指数化し、2011年から公表しているのが「非英語圏の英語力ランキング」である。
非英語圏というと、日本などのアジア諸国などをまず思い浮かべるかもしれないが、ヨーロッパも英国以外のほとんど国は非英語圏である。私の印象では、ドイツやオランダ、北欧の人の同僚の英語力は極めて高かったが、ランキングではそれを如実に表している。
非英語圏の英語力ランキングTop10
1位 スウェーデン
2位 オランダ
3位 シンガポール
4位 ノルウェー
5位 デンマーク
6位 南アフリカ
7位 ルクセンブルク
8位 フィンランド
9位 スロベニア
10位 ドイツ
アジアの人たちはヨーロッパの人たちと比べると、母国語と英語との使用文字、文法などの違いが大きいため、英語を修得するのはハードルが高いとされている。それでもシンガポールのように、英語力が突出して高い国もある。シンガポールは英語を含めた4言語を公用語に定め、共通語として学校(小学校から)の授業などを英語で行っている。
日本は、2011年は14位だったが、年々順位を落とし、2018年は49位となってしまった。ここまで下がってしまった理由のひとつは、2011年に44か国だった調査対象国が2018年には88か国まで倍増したことが考えられる。そこで参加国数の影響を除外するため、参加国を100か国に換算して仮に順位を求めたところ(下表)、2011年度31位から2018年度55位へと、先ほどのように急激ではないがしかし「確実に」順位を落としてきていることがわかる。
表 非英語圏の英語力調査(EF Education First)での日本の英語力の変遷*
英語力順位 | 調査国数 | 調査国数(100カ国)換算順位 | 5段階能力レベル | |
2011年 | 14位 | 44カ国 | 31位 | 3(標準的) |
2012年 | 22位 | 54カ国 | 40位 | 3(標準的) |
2013年 | 26位 | 60カ国 | 43位 | 3(標準的) |
2014年 | 26位 | 63カ国 | 41位 | 3(標準的) |
2015年 | 30位 | 70カ国 | 42位 | 3(標準的) |
2016年 | 35位 | 72カ国 | 48位 | 4(低い) |
2017年 | 37位 | 80カ国 | 46位 | 4(低い) |
2018年 | 49位 | 88カ国 | 55位 | 4(低い) |
*EF Education Firstの公表結果(https://www.efjapan.co.jp/epi/)をもとに、当サイトで独自に100カ国順位に換算、表を作成。
特に最近3年間の順位の低下は顕著である。これは、EF SET®の認知度の広がりに伴って母集団の質が変化した影響もあるだろう。ある意味、当ブログの読者のような英語学習熱心な方の受験層から、一般の英語初学者へと受験者者層が広まってきて、一般的な日本人の英語力を反映しだしたといえるかもしれない。
特に2018年は2年後に控えたオリンピック関連のニュースや、訪日客激増、大学入試改革のニュースなどで、一般の方の英語学習への関心も高まった年である。
しかしながら、実際に世界の非言語圏の国々の中で、日本人の英語力がかなり下のほうになっているのは否定できない。英語教育に携わる者として、この結果を真摯に受け止めなくてはならない。
EF Education Firstのサイトでは、英語力順位に加えて1人当たりの国民総所得や国家予算に対する教育費の割合、インターネット普及率など色々な指標を比較できる。
そこで気づいたのが、日本(の国家予算)は他国と比べて教育にお金をかけていないということ。
日本の国家予算のうち、教育費の占める割合はわずか9.2%となっている。これは、英語力順位22位のマレーシアの20.6%、同2位のシンガポールの20.0%、28位のインドの14.1%に比べて低い値である。個人的に日本は教育、特に公教育にもっとお金をかけるべきだと思う。
その上で、当サイトで紹介する無料の学習サイトなども併用しながら、英語学習をより効果的に、いっそう充実したものにしていくことが必要である。